ドバイといえば、後先考えずに豪華な観光都市開発をして、バブル経済を崩壊させてしてしまった国というイメージが定着してしまったようです。

 しかし、ドバイが目指していたのは、単なる観光都市としての発展ではなく、実はMENA地域の金融センターとなることだったのです。

 MENA地域の金融センターになることに、どのような意義があるのかについて理解するためには、まず世界の金融センターが、どのように機能しているかについて、理解しておく必要があります。

 一日の二十四時間を三分割すると八時間になりますが、この八時間は、午前九時から午後五時までの一般的な就労時間に相当します。

 そのため、日付変更線をまたいで東から、アジア、欧州、米国の順で金融市場が動きだし、世界の金融市場は、二十四時間休まずに機能しています。

 それで、米国ならニューヨーク、欧州ならロンドン、アジアなら香港やシンガポールが、それぞれの地域の中心的な金融センターとして機能しています。

 東京がアジアの金融センターだと、誤解している人が少なくありませんが、東京は海外の金融機関からは、アジアの金融センターだとは、みなされていないのです。

 これは空港でも同じですが、アジアの空港の中心となっているのは、シンガポールやマレーシアであって、不便で空港使用料が高額な、成田や羽田ではないのです。
 
 ドバイは世界屈指の産油国のアブダビとは違い、資源に乏しい小国なので、何か産業を起こさないと生き残っていけません。

 それで小国でも大きな利益を上げることができるビジネスモデルとして、香港やシンガポールのような観光+金融センターとなる道を選んだのです。

 このことはドバイの金融センターであるDIFC(ドバイ国際金融センター)のホームページをみれば明らかです。

《Dubai International Financial Centre (DIFC)》
The DIFC is the world's fastest growing international financial centre. It aims to develop the same stature as New York, London and Hong Kong.


 DIFCのホームページの先頭には、この通り『DIFCは世界で最も成長が著しい金融センターです。ニューヨークやロンドンや香港に匹敵することを目指しています』と書いてあります。

 湾岸地域ではこれまで、バーレーンが金融センターとして機能してきました。しかし、ドバイはバーレーンから湾岸地域の金融センターとしての地位を奪い、湾岸地域、ひいては、トルコや北アフリカまでを含めた中東全域を、カバーする金融センターとなる野心を抱いていたのです。

 ところが、ドバイは、北欧の金融センターになることを目指しながらも、国家破綻してしまったアイスランドのような状況に陥ってしまいました。

 FX取引や株式のオンライン取引などをやったことがある人には、実感が沸くと思いますが、資金の流れは単なるデータの流れに過ぎません。

 資金的な裏付けさえあれば、パソコン一台で、数兆円単位の資金を動かすことも可能なのです。

 ですから、セキュリティー・レベルの高い大き目のビルに、所狭しに並べられたコンピュータと、それを使いこなせるオペレーターさえいれば、金融センターとして機能することができるのです。

 金融センターとして、世界の金融機関や投資家から認めてもらうためには、コンピュータとオペレーターの他にも、以下のような条件を満たしている必要があります。

1.政権や国家運営が安定していること。

 頻繁にクーデターやテロが発生する国や、いきなり戒厳令が敷かれて海外送金が停止される可能性のある国には、安心してお金を預けられません。

2.金融・証券法が『適度』に整備されていること。

 ナウル共和国のように金融規制が少な過ぎて、マネーロンダリングの温床になるような国は、問題があります。しかし、日本のように金融・証券関連法が厳し過ぎる国も、商売がやり難いので、『適度』に金融・証券関連法が、整備されていることが重要なのです。

3.金融・証券取引に必要な情報・通信インフラが整備されていること。

 オンラインで送金したり、株式を売買しようとしたりしている時に、通信網がダウンしていたのでは、話になりません。

4.税金が安いこと。

 金融商品取引から得られる利益に対する税金が高い国からは、投資家が逃げ出してしまいます。

5.金融・証券取引に精通した人材が確保できること。

 金融や証券の専門家は、高額な給料さえ払えば、世界中何処からでもヘッドハンティングできます。それから、海外の資産運用のプロに資産運用を任せてしまうという手法も使えます。ですから、本当に重要なのは、誰が本当の資産運用のプロなのかを見抜くことができる人材と、投資家との人脈を持っている人材です。

(ドバイショック 第四話に続く)

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北村陽慈郎
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